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  08 ,2017

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「旧竹鶴邸と余市最古のリンゴの木を見に行く…」
 昨夜は10時すぎに寝たせいもあり、早朝5時に起床。1階の大浴場でゆっくり朝風呂につかり、7時にホテルの前を流れる余市川へ。標識を見ると2級河川とあるが、ゆったりとしたその流れは、スコットランドのそれを想わせるものがある。

 女将に教えられていた鮭のやな場はすぐの所で、よく見ると産卵をひかえたたくさんの鮭が、流れの中を泳いでいる。余市川は鮎が棲息する北限の川として知られているが、初夏から晩夏にかけては鮎、そして秋には鮭が遡上する自然豊かな川なのだ。

 かつて蒸留所があった辺りは湿地帯で、余市川はてっきり泥炭の川、つまりピートの川だと思っていたが、河口からわずか数キロメートルで、鮎が棲息する清流が流れている。つまり川底は鮎が好む小石が多くあり、そこは湧き水があるせいか、鮭の格好の産卵場所ともなっているのだ。

 余市川の散策を楽しんだ後、8時から朝食。季節はずれではあったが、名物の鮎の塩焼きをオーダーしてあった。聞くと女将がみずから焼いてくれたのだという。

 9時すぎにホテルをチェックアウトし、山田町の旧竹鶴邸跡地へ。今は余市蒸溜所内に移設されているが、敷地や門、石造りの蔵はそのままに残されている。リタ夫人の好みで生け垣にはイチイの木が植えられていたというが、今はすっかり大きくなっている。

 水明閣の女将の話では、そのイチイの生け垣のそばを通って毎日学校に通ったという。「赤い実を食べるのが楽しみでした」と、当時を回想していたが、なるほどイチイの木がキイチゴのような赤い実をつけている。イチイの実を食べるのは初めてだったが、口に入れるとほのかに甘酸っぱい味がした。

 イチイは英語ではユーツリー(yew tree)。かつては教会などに植えられ、その枝から弓が作られたという樹木で、イギリスではよく見かけたものだ。ただし実がなることも、その実が食べられることも初めて知った。

 しばし写真を撮ったあと、同じく山田町にある吉田観光農園へ。ここにある樹齢140年近いという、北海道最古のリンゴの木を見るためだ。何のアポもとっていなかったが、ちょうど運の良いことに主の吉田さんがいらして、興味深い話を聞くことができた。もちろん、余市のリンゴ栽培のもととなった、そのリンゴの木も案内してもらった。

 余市のリンゴ栽培は、明治初期にこの地に入植した旧会津藩士の手によって始められた。180家族が入植したというが、現在残っているのは4~5軒だという。吉田さんは、もちろん、そのうちの一人。御歳80だというが、記憶もしっかりしている。

 その最古の木はアメリカからもたらされた「緋の衣」という品種で、今はこの吉田農園くらいでしかつくっていない。樹齢に反して高さが3メートルほどしかないのは、140年間栽培用として吉田家が代々、丹精こめて育ててきたためだ。今でも秋になると7~8箱のリンゴが収穫できるという。その「緋の衣」も食べさせてもらったが、現在の品種と比べて皮が厚く、酸味も強い。しかし、それは余市の歴史そのものであり、竹鶴政孝のウイスキー造りも、その木がなかったら始まらなかったのだ。

 すっかり長居をしてしまったが、午後にアポがあるため農園をあとにし、ようやく余市蒸溜所へ。観光客でゴッタ返す蒸留所に、まずはビックリした。駐車場も満杯だという。

 1時すぎに東京から飛んできてくれたアサヒのYさんと合流し、1時半から杉本工場長、そして3代目マスターブレンダーの佐藤さんにインタビュー。『Whisky World』の巻頭インタビューで、竹鶴17年をいただきながら、政孝さんの思い出や、竹鶴イズム、今の状況などについて3時近くまで伺った。

 その後、蒸留所を見て回り、5時前に余市をあとにしてレンタカーで小樽へ。ホテルにチェックイン後、運河の近くにあるバー「RITA」へ。ここで1杯だけザ・ニッカ12年を飲んで、7時半から佐藤さんと一緒にすし屋に行き、久しぶりに杯を傾ける。わざわざ余市から一度札幌の自宅にもどり、再び電車で小樽まで来てくれたのだ。

 すしも美味しかったが、その佐藤さんの気持ちのほうが嬉しかった。最後に駅の改札まで佐藤さんを送り、10時半すぎにホテルにもどる。たった2日間の取材だったが、新しい発見がいくつもあった、充実の旅であった。

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