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  06 ,2017

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「ペンデーリン蒸留所を再訪」
 今回の旅で唯一訪れることになったペンデーリン蒸留所について。

 ペンデーリンまではスランゴイドホールから車で約1時間弱くらい。ホテルからだとブレコンビーコン国立公園の中を通って南下するかたちとなる。途中公園内のブラックマウンテンズを通るが、その景色に圧倒される。とにかくウェールズは、どこまで行っても緑、緑の一色だ。スコットランドだと、山の上の方はヘザーかゴツゴツした岩がむき出しになっているが、ウェールズは山の頂上までグリーン一色。まるで大きくうねる緑の海の中にいるようだ。

 ペンデーリンには11時に到着。建物は以前来たときとそれほど変わっていない印象だが、中に入って驚いた。モダンなビジターセンターがオープンし、立派な売店もできている。すぐにでも製品ラインナップを見たかったが、まずはガイドツアー。といってもペンデーリンにはマッシュタンもウォッシュバックもなく、ここでやっているのは蒸留と樽詰め、熟成、そしてボトリングだけである。

 ガイドのマークさんの話によると、今でも仕込み、発酵はカーディフのブレインズという地ビール会社がペンデーリンのために行い、それを週に2回タンクローリーで運び、ここで蒸留をしているのだとか。ただし、今年中にマッシュタンもウォッシュバックも導入し、さらにポットスチルも、もう2基増設して生産量を増加させるという。

 それはともかく、ここのスチルは実にユニークなシロモノだ。「スコッチともアイリッシュとも違う個性を」ということで、イングランドのレディング大学で教授を務めるデイビッド・ファラディー博士が、特別に考案したものだ。ちなみに、デイビッドさんは、あの『ロウソクの科学』で有名なマイケル・ファラディーの子孫だという。

 このスチルがユニークなのは、モロミ(約8%)から一気に91~92%のスピリッツが蒸留できるよう、ヘッド部分に連続式蒸留機のような棚板を組みこんでいることだ。もちろんシーブトレイで、最初のヘッドの部分に6段、横に設置された塔に18段の棚が入っている。つまり、合計24段のシーブトレイによって、アルコール度数を上記の高さまで上げることができるのだ。

 マークさんによると、このスチルに張りこむモロミの量は約2,500リットル。スピリッツとして取り出すのは、そのうちの10%に当たる250リットルのみ。平均度数は91%くらいだとか。ニュースピリッツを取り出すのは、横に置かれた塔の7段目からだという。その91%のニュースピリッツをそのまま飲ませてもらったが、思ったよりピュアでクリーン、そしてシトラス系のフルーツフレーバーがあって、酒質も悪くないと感じた。ペンデーリンでは、それを63%まで加水して樽詰めを行うという。

 ペンデーリンは珍しいことに、そのほとんどの製品がウッドフィニッシュものだ。主力製品はマデイラフィニッシュで、これはバーボンバレル(主にバッファロートレース)に4~7年間寝かせたペンデーリンの樽を選び、それをヴァッティングして、マデイラ樽に詰め替えたもの。後熟期間は6か月だという。その他に、シェリー樽フィニッシュ、ピーテッド、そして一番新しいシリーズとしてポート樽フィニッシュの4種類がある。

 シェリー樽フィニッシュはシェリーバットで同様に後熟を行ったものだが、ユニークなのが3番目の“ピーテッド”。これはアイラカスクに同様に詰め替えたもので、ノンピートのペンデーリンがスモーキー、ピーティーに仕上がっている。この樽は以前はラフロイグのものを使っていたが、今はキルホーマンの樽だという。テイスティングさせてもらったが、ライトでフルーティーでありながら、ソフトなスモーキーさを併せ持つ。非常にユニークなテイストだ。

 4番目のポートウッドは、もちろんポートカスクで後熟させたもので、これだけ41%でのボトリングとなっている。もともとフランスのメゾンドウイスキー用だったが、現在は広く流通させているという。ペンデーリンの最大の市場は英国国内で、2番目がフランスだという。ボトルデザインといい、『AC』、オーカムリ(ウェールズの黄金)のロゴといい、フランス人好みの洗練されたテイストが受けるのかもしれない。

 ペンデーリンがつくっているのはウイスキーだけではない。主力商品はウイスキーの他に3つ。1つは「ブレコン」というジンで、これには10種のボタニカルが使われている。もう1つが「ファイブ」というウォッカで、これは5塔のマルチコラムで蒸留したことを表しているという。そして最後が「マーリン」という、クリームリキュールだ。マーリンはアーサー王の物語に登場する魔法使いのこと。たとえばベイリーズなどアイリッシュクリームは、クリームとウイスキーでつくられるが、ペンデーリンのマーリンはウイスキーではなく、ペンデーリンのニュースピリッツと生クリームからつくられるという。あくまでもペンデーリンの個性を強調しているのだ。ジンも最後にペンデーリンのスピリッツを加えてつくっているという。

 それらの試飲をすべて終え、買い物を済ませて蒸留所をあとにしたのは、12時半すぎのことだった。旅はまだまだ続く…。
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