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  03 ,2023

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「アメリカ取材から無事帰国」
 アメリカ東部時間3月27日午前10時15分にルイヴィルを発って、アトランタ経由で28日午後4時すぎに成田に着いた。アトランタから成田まで14時間のフライトというのは、とにかく長い。乗り継ぎで30時間近くかかったというのはあったが、1回のフライトで14時間というのは、個人的にも最長ではないかと思う。正直、この年になると10時間を超えるフライトというのはツライ…。

 今回は正味6日という短い取材だったが、それなりに見て回れたと思っている。取材した蒸留所はバーボンがジムビームとメーカーズマーク、バッファロートレース、ワイルドターキー、フォアローゼズ、ウィレットの6ヵ所。それ以外にウッドフォードリザーブ、バートン、ヘブンヒル等は外観、売店を写真に撮っている。

 さらにクラフトディスティラリーとしてタウンブランチ、ライムストーンブランチ、コルセアの3ヵ所。そしてそれらの蒸留機器を一手につくるルイヴィルのヴェンドーム社も取材した。蒸留所以外では、ルイヴィルのチャーチルダウンやリンカーン生誕の家、幼少時代をすごしたノブクリークなども訪れることができた。詳細については『Whisky World』や『ウイスキー通信』に書くつもりだ。

 それにしても今回の取材で分かったことは、今アメリカは空前のバーボンブーム、ウイスキーブームだということだ。特にアメリカでは“クラフトディスティラリー”と言っている、マイクロ蒸留所が凄い勢いで誕生しつつある。今回はそのうちの3つを取材できたが、フォアローゼズのジム・ラトリッジ氏によると、今全米にそうしたクラフトディスティラリーが300近くあるという。しかも半年前にはそれが250だったのに、この半年で50も増えたという。

 ヴェンドームを取材した際も驚いたのだが、4代目副社長のマイケル・シャーマンさんによると、ともかく注文が殺到し、この2週間で新たなオーダーが4件も入ったという。

 車のオーダーのような簡単な話ではない。最低でも1基2000万円近くもするスチルが、どんどんオーダーが入っているというのだ。たしかにヴェンドームで見せられたスチルは大小様々。中には奇妙キテレツなものもあり、今アメリカのクラフトディスティラリーで進行していることの一端を垣間見ることができた。

 バーボンはビアスチルという連続式蒸留機で造るという、これまでの常識はもう古いのではないかと思わされた。たしかにヴェンドームでいくつかのビアスチルのニューメイクも見たが(高さ10数メートルのビアスチルを作っている様子は圧巻だ!)、圧倒的に多いのが独特なポットスチルだった。これはもはやスコットランドの比ではない。しかも、奇妙キテレツなものも多い。それだけ、全米中のクラフトディスティラリーが多様化しているのだ。

 最終日に訪れたボーリンググリーンのコルセアは、その典型かもしれない。何しろ大麦、小麦、トウモロコシだけでなく、13の穀物をウイスキーの仕込みに使っているのだ。聞けばコーンが2種類、ライが3種類、その他にアワ、キビ、オーツ、ソバなど、まるで穀物商さながらだ。

 特に面白いのが、キノア(キヌア)を使ったキノアウイスキー。キノアは南米原産のアカザ科の穀物で、栄養価が高いことからNASAが21世紀の宇宙食として注目している穀物だ。タンパク、ミネラル、食物繊維が豊富だが糖度が少ないため、これを20%に大麦麦芽80%を加えて、仕込みに用いているという。とにかく味も独特で面白い…。

 まあ、それにしてもクラフトディスティラリーは凄まじい! コルセアのオーナーのデレク・ベル氏はそれらのウイスキーのレシピ、造り方を公開し、しかもそれを本にして出版している。もちろん、その場で一冊購入したが、こういう本を参考に、我もわれもと、続々と蒸留所(?)をつくる人間が続出しているのが、今のアメリカの現状なのだろう。それはまさしくカウボーイスタイル、アウトローであるという印象を持った。

 それにしても、ケンタッキーは春の嵐で寒かった…。日本の桜がウソのように連日朝晩は氷点下で、日中も4~5度どまり。最後の2日間は雪が降って2~3センチの積雪に見舞われた。ケンタッキーは内陸で、寒暖差が厳しいとは聞いていたが、今回、それを初めて実感することとなった。

 冬はマイナス20度、夏は30度…。まさにそれがバーボンの故郷であるケンタッキーの現実なのだ。

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