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  04 ,2018

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「鹿児島の佐多宗二商店を取材で訪れる。」

 羽田発8時5分のJAL便で鹿児島に向かう。10月21・22日に「マルス津貫、佐多宗二商店」のツアーを企画しているため、その下見も兼ねた取材である。鹿児島に来るのは2月の本坊酒造さんのイベント以来7ヶ月ぶりだ。

 佐多商店のFさんに空港まで迎えに来てもらい、車で約2時間弱の佐多宗二商店に向う。佐多さんのところは1908年に創業した焼酎蔵で、現在の当主は3代目の佐多宗公さんである。黒麹を使った「角玉」、白麹を使った「晴耕雨読」などの本格焼酎や、梅酒などで知られるが、ここ数年本格的に取り組んでいるのが、従来の焼酎蒸留器とは違ったグラッパやブランデー用のスチルを使った芋焼酎や、多種多様なスピリッツ類だ。

 つい最近のANAの国際線機内誌『翼の王国』にも紹介されるほど国内外で今大注目の蔵元である。すでに仕込みに入ったという焼酎づくりから、さっそく見せてもらうことにしたが、これが実に興味深い。焼酎蔵は沖縄のヘリオスや石垣、宮古のいくつかの蔵、さらに宮崎県高鍋町の黒木本店や宝酒造の工場なども見ていたが、本格芋焼酎の蔵は初めてだ。ちょうど芋(コガネセンガン)の搬入、選別、洗いの作業中で、1個1個、ていねいに手で泥を落としているのが印象的だった。

 巨大なベルトコンベア状の機械で蒸したあとのコガネセンガンを試食させてもらったが、これがほのかに甘く、想像していたより美味しい。これが2次発酵用の原料で、その前に酒母づくりを行う1次発酵の様子も見せてもらった。使うのはタイ米と黒麹、白麹、これも仕込み中の壷の中から直接味見をさせてもらう。

 しかし、なんといっても圧巻は、多種多様な蒸留器だ。佐多さんのところには2つの蔵があるが、元々の伝統的な蔵には本格焼酎のスチルが5基入っている。どれもステンレス製だが、よく見ていくと5基とも微妙に違う。その仕組についての詳述は省くが、ネックの部分の邪魔板と、ラインアームのところのシェル&チューブ方式の冷却装置が、やはり面白い。

 なんでも”ケイアイ式”といって、ケイアイという会社が設計したものだというが、いずれにしろ、焼酎蒸留器がウイスキーなどのスチルと大きく違う点は、直接蒸気をモロミの中に吹き込むかどうかという点。芋焼酎の場合はモロミに直接ノズルから高温の蒸気を吹きこみ、それでモロミの中のアルコールを分離する仕込みなのだ。

 それを佐多さんのところは”直接加熱蒸留”と表現していたが、そういえなくもない。ウイスキーなどの直接加熱とは、まったく意味が異なるが。

 それに対して指宿、枕崎線(JR)の線路をはさんで反対側にある通称”赤屋根蒸留所”では、ヨーロッパのスピリッツ、ブランデー用のスチルがずらりと並ぶ。そのうちの2基はグラッパ用を独自に改造したもので、イタリア製だ。そしてもう1基はドイツ・ホルスタイン社製のハイブリッド型蒸留器。今はこれでジンやスピリッツをつくっている。

 そしてさらにもう1基。驚いたことにこれはフランス・ジャルナック製のコニャック用のシャラント式アランビックで、将来はこれでカルヴァドスやブランデーをつくりたいということだったが、私が訪れた時は、これで芋焼酎を試験的に蒸留していた(!)。

 つまり合計9基のスチルが佐多さんのところにはあり(グラッパ用のスチルは2基で1対になっているので、実際は計11基)、こんな蒸留所は世界中どこを探しても、ないのではと思われる。佐多さんの熱い話を聞いていると、ANAの機内誌(ルポは外国人記者)がわざわざ佐多さんのところを取材した理由がよく分かる。

 ある意味、薩摩焼酎の革命児であり、そして尊敬と驚きの念をこめていえば、まさに”蒸留器オタク”なのだ。日本の最南端の地に、こんなスゴイ人がいるんだということを、改めて知らされた一日となった。


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