fc2ブログ
1
2
4
5
6
8
10
11
13
14
15
17
18
20
22
23
25
27
30
31
  05 ,2021

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR

 

「丹波市の古民家を訪れ釣りの本をいただく…」
 さすがに11時間も船に乗っていたせいもあり、体の節々が痛い。昨日はずっと体が揺れていたが、まだ少し揺れが残っている感じだ。ホテルで朝食をとり、8時半に丹波を目指して出発。実は版画家の渡辺さんが、3月に引っ越した家が丹波の大きな古民家で、そこに釣り関係の古書があるということで、急遽、釣りの古書のコレクターとしても有名なMさんに同行してもらい行くことになったのだ。

 丹波市の春日町にあるその民家は本上田家が明治27年(1894年)に建てたもので、敷地は約700坪。庭には樹齢450年の大きな楠の大木もあるという豪邸だ。明石から車で1時間半という距離だったが、着いてさっそく当主のUさんと、管理を任されている渡辺さんの出迎えを受け、古書を見せてもらうことに。淡路島在住のMさんは、釣り本7000冊を誇る有名なコレクターでもあり、そして研究者でもある。当主のUさんの祖父が持っていた本だというが、ほとんどが戦前のもので、どれも100年近くたっている貴重なものばかり。

 中にはMさんの持っていない本もあり、小一時間くらいかけてチェック。Uさんが、「どれでも好きなものを持って行ってください」というので、私も甘えて単行本を一冊と、雑誌2冊をいただくことに。単行本は〝釣聖″といわれるアイザック・ウォルトンの『Compleat Angler(邦題・釣魚大全)』で、この本はいくつかの翻訳本が出ているが、平田秀木の訳本は初めて見た。出版年月日を見たら、昭和11年10月16日発行とある。つまり1936年の発行で、90年近くも前の本だ。ところどころにUさんの祖父の赤線が引かれているが、状態はすこぶる良である。

 この本のイギリスでの初版は1653年で〝釣り師のバイブル″と呼ばれ、現在までに全世界で翻訳され、多くの版が出ている。この本の存在を最初に日本に紹介したのが、明治の文豪、幸田露伴で、露伴は無類の釣り好きだった。釣魚大全という言葉は、もともと露伴が考案したという説もある。私事にはなるが、私が1995年にモルトウイスキーの蒸留所を網羅した本を出そうと考えたとき、そのタイトルを「大全」としたのは、まさにこの釣魚大全があったからなのだ。

 その幸田露伴がやはり出版にかかわった戦前の雑誌が『水の趣味』である。昭和8年(1933年)の創刊だと思うが、釣り雑誌なのに水の趣味と言ってのけるところが、今から考えてもスゴイ。そのセンスはやはり露伴である。題字は、露伴が自ら書いている。そのバックナンバーもあり、うち2冊をいただいた。実物を見るのは、やはり初めてで、しばし時間も忘れて見入ってしまった。

 結局ランチで渡辺さんが作ったインド料理と、そして昨日釣った鯛とワラサの刺身をいただくことに。Uさん宅を辞して、新神戸から新幹線に乗り、東京にもどったのは7時すぎ。車内はひたすら爆睡!!


0529-1.jpg


0529-2.jpg


0529-3.jpg


0529-4.jpg


0529-5.jpg



* ウイスキー文化研究所公式HP
* ウイスキー文化研究所公式twitter

スポンサーサイト