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  10 ,2017

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「マスターズドリームとインディアンウイスキー」

 そういえば先週金曜日はサントリーのビールイベント、マスターズドリームの山崎熟成樽ビールの発表会に行っていた。

 これは山崎を熟成させていた樽に詰めた特別のプレミアムモルツ(マスターズドリーム)で、通常よりアルコールと度数が高く、8.5%のビールだという。

 いわゆる”ウイスキーカスク・ビール”で、古くはグレンフィディック(ウィリアム・グラント&サンズ社)がやっていた、エールカスクフィニッシュで、そこに詰められていたエールを瓶詰めしたのがイニス&ガンズである。最近はけっこうあちこちの蒸留所で、このてのエールカスクフィニッシュが試されている。

 ウイスキーの側から見ると、ビールを詰めた(数ヶ月間)樽でウッドフィニッシュさせることで、新たなフレーバーをウイスキーにもたらそうということだが、ビール側から見たら、まったく別のビールに変身する可能性を秘めている。

 初めてそのポテンシャルに気付かされたのは、ケンタッキーのタウンブランチ蒸留所がやっていた、”バーボンバレルエール”だった。これはバーボンバレルに、彼らが造っていたケンタッキーエールを詰めたもの。

 そのための巨大なウェアハウスを見せてもらったが、たしかその建物全体を年間を通して4℃にキープしていた。ケンタッキーの気候風土のもとで4℃にキープするということは、体育館みたいな巨大な倉庫全体を冷蔵庫にする必要があるということで、巨額な金がかかっている。

 4~5ヶ月間の熟成だが、その間にエールは通常の4~5%のアルコール度数が6.5%前後まで上昇する。それと同じことがサントリーのマスターズドリームの山崎カスクでも起こっているのかと思ったが、そうではないという。最初から8.5%前後にした強めのビールを山崎のカスクに詰めたという。もっとも、今回のバージョンは非売品で、それも大瓶換算で1000本ほどしか造っていないということだ。

 昨日の月曜日はエキスパート試験の翌日ということもあり、ウイ文オフィスは静かそのもの。そんな中、ガロアのテイスティング用として撮影の終了した、インディアンウイスキーを試飲する。インドのゴアにあるポールジョンで、5本のボトルが届いていたので、そのうちの3本を試しにテイスティング。

 ピーテッドのカスクストレングスとノンピートのカスクストレングス、そしてもっともスタンダードであるブリリアントの3種で、大麦はインド産の六条大麦を使っているという。詳細は省くが、インドのウイスキーには3つのカテゴリーがあり、シングルモルトという場合は麦芽100%で、蒸留にはポットスチルを使うことが義務付けられている。ポールジョンは、もちろんインディアン・シングルモルトだ。

 これが驚いたことに、どれもリッチでフルーティー。独特の甘みもあり、スムーズで美味(!)。エンジェルシェアは台湾同様、12~16%くらいというが、それ故に一気に熟成が進むのだろう。なんとなく、カバラン、そして台湾第2の蒸留所、南投産のモルトウイスキーを飲んでいるような気がした。

 つい最近、エジンバラのソサエティ(SMWS)が、このポールジョンをコードNo.134に認定して2本ボトリングして話題になったが、それがよく分かる気がする。それほど秀逸なウイスキーなのだ。

 もはやウイスキーは北の大地で造るものではなくて、南の亜熱帯でも、熱帯でも造れる酒なのかもしれない・・・。



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