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  12 ,2016

プロフィール

mtsuchiya

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「藤原さんのオークニー写真とダライラマの黄色の糸・・・」

 来年2月に創刊する『ウイスキーガロア』の創刊記念特集として、藤原新也さんの特別インタビューとオークニーの写真を掲載することになり、12時に大久保の藤原さんのアトリエへ。

 先々週、藤原さんが上梓したのが小説『大鮃(おひょう)』で、その小説の舞台となったのが実はオークニーだった。藤原さんと私が『コヨーテ』(スイッチ出版)の取材でオークニーに行ったのは、ちょうど12年前の2004年のこと。

 ハイランドパークが日本限定の、たしか1967をリリースした時で、その取材も兼ねていた。『コヨーテ』では藤原さんが30ページ近くオークニーについて書き、私が10ページほどハイランドパークについて触れた。

 その時の旅行がもとになって、今回特別に書きおろしたのが『大鮃』で、その取材の際に撮った写真で、本邦未公開になっている写真を、特別に『ウイスキーガロア』の創刊号で使ってもよいという話だった。つまり、まだ誰も見たことがない藤原さんの写真が、ガロアに載るということだ。

 それに合わせて、創刊後の3月12日(日)に飯田橋のグランドパレスホテルで、創刊記念イベントとして、藤原新也さんのトークイベントを行うことも急遽決定した。まだどんな会になるか未定だが、できれば私がMCを務め、藤原さんにいろいろ語ってもらおうと思っている。もちろん、藤原さんのサイン入りの本もお土産にしようと思っている。

 そんな話をして、3時すぎにウイ文研のオフィスにもどり、事務仕事を片付ける。ガロアの件でこのところミーティングが相次いでいたが、やはり年の瀬は慌ただしい。ジャパンインポートから、東京フェスオリジナルのグレンバーギ、ベンロマック、そしてこれは検定合格者用のボトルだが、カリラの2005年が届いたこともあり、スクールには、その段ボールが山のようになっている。

 検定のカリラは、合格者特典の第2弾(第1弾はマクダフ)で、GMのエクスクルーシブラベルだが、下に「ウイスキー検定」と日本語が入っている。人気のカリラなので、ぜひ検定の合格を目指して頑張ってもらいたいものだ。もちろん、第3回までの合格者は、来年1月から販売開始である。

 そういえば先日テレビでダライラマの特集をやっていたが、ダライラマ14世も、もう今年で81歳。私が初めて法王とお会いしたのは1976年9月のことなので、もう40年になるのかと、感慨深いものがあった。

 当時通っていた西チベット・ラダックのインダス川の広大な河原で、ダライラマの大法要があり、私も一週間ほど取材のため通いつめた。ラマ教徒1万人が参集したツォスルコル・ワンチェスの大プジャで、その時配られた黄色の糸を今でも持っている。

 実はこの時、1万人の大群衆に黄色と赤の2本の細い糸が配られた。赤い糸は身につけると護身用となり、黄色の糸は財布などに入れると金運が良くなると説明された。赤い糸は首に巻いていたが、その後、インドを旅している時に、いつのまにか千切れて失くなっていた。2~3ヶ月で役目を終えたのだろう。

 黄色の糸は財布に入れていたが、それ以来40年間、ずっと私の財布の中におさまっている。もちろん財布を買い換えるたびに、糸クズのようになったその黄色の糸を入れ替えている。つまりこの40年間、かた時も私と離れることなく一緒にいるのが、1976年の9月にダライラマからもらった黄色の糸なのだ。

 一度、不思議な体験をしたことがある。『日経トレンディ』の取材でイタリアのローマに行った時に、ジプシーの女の子たちに財布を盗まれたことがある。バルセロナオリンピックの年だから1992年のことだったと思うが、一瞬、しまったと思った。もちろん現金で10万円くらい入っていたから、それもショックだったが、その糸も失くなったと思ったからだ。

 ところが、直前のパリで古くなった財布にかえて新しい財布を買っていたことを、すぐに思い出した。もちろん、糸はすでに新しいほうに移し替えていた。ジプシーの女の子たちにすられたのは、イタリアのリラを入れた古いほうの財布だったのだ・・・。新しいほうにはそのままポンドとフランが入っていた。

 あれから24年、もうすでに何代目の財布になるのか覚えていないが、今でも私の財布の中に黄色の糸がしっかりとおさまっている。ダライラマのニュースを見るたびに、40年間いつも私と一緒にいる、その不思議な糸のことを、いつも思い出すのだ。


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