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10 ,2015
世間はハロウィーンの日だとかで、ずいぶんとやかましい。ある研究機関の試算によると、その経済効果は1200億円を超えるとかで、バレンタイン商戦より上らしい。それにしても、日本はいつからこんなことをやるようになったのだろう。
もともとハロウィーンはケルト、つまりスコットランドやアイルランドの風習で、悪霊駆除、収穫祭の意味があったが、今はすっかりカボチャのお化けだらけだ。イリギスに87年から93年まで、足かけ5年半ほど暮らしたが、あまりハロウィーンの印象がない。それよりロンドン辺では、11月初めのガイフォークスデーの花火のほうが、よほど盛り上がっていた。
昔、国会議事堂を爆破しようとしたガイ・フォークスにちなんで毎年テムズ河で花火大会が開かれるのだが、11月の寒空に打ちあがる花火がなんとも物珍しかった。もっとも、今ではイギリス中でハロウィーンだ。この前アイラ島に行っている時、朝のテレビニュースで、今年はカボチャが不足していて、このままではハロウィーンが盛り上がらないとやっていた。例によって半分ジョークだが、それだけこのお祭り騒ぎがイギリスでも定着しているのかと、逆に驚いた。
と、まあ、そんなことと関係なく、朝から『Whisky World』の原稿書き。その後、昼過ぎに仕事場を出て、2時50分に神楽坂の「フィンガル」へ。3時からワールドのブッシュミルズ特集で、私とフィンガルのYさん、そしてテイスターのMさんの3人で、ブッシュミルズのテイステインング座談会。
ブッシュミルズがディアジオからクエルボ社に移り、それに伴って日本での取り扱いもキリンディアジオから、アサヒビールに移ったため、急遽組まれた特集ページだ。テイスティングアイテムは、日本に輸入されているホワイトブッシュ(オリジナル)、ブラックブッシュ、シングルモルトの10年、16年の4種類だ。
ホワイトとブラックは新ミドルトンのグレーンウイスキーがブレンドされた、いわゆるアイリッシュブレンデッド。新ミドルトンのグレーンはタンカー(タンクローリー車)でブッシュミルズに運ばれ、ブッシュミルズで樽詰め・熟成が行われる。ブッシュミルズのモルト原酒はラック式だが、ミドルトンのグレーンはパラタイズ式と分けられている。
久しぶりに4種を並べてテイスティングしてみたが、実に面白い。それぞれにコンセプト、個性がはっきりしていて、飲み比べることで、それがよく分かる。
ブッシュミルズのモルトウイスキーは、ノンピートの3回蒸留だが、記事をまとめるのに必要と思い古い手帳を操っていたら、2007年の私のメモ帳にとんでもない記載がみつかった。それは一時期、日本のあるメーカーに頼まれてピーテッド麦芽のブッシュミルズを仕込んでいたことがあるというメモ書きだった。
すっかり、そのことを忘れてしまっていたが、メモにはそのメーカーの名前も書いてある・・・。実は11月29日の東京フェス用に、オリジナル記念ボトルとしてスコ文研が詰めているのが、1988年のアイリッシュシングルモルトで、これがブッシュミルズである。
ラベルに、そのことは記載できない約束だが、1988年蒸留のアイリッシュシングルモルトといえば、ブッシュミルズしか存在しない。なぜなら、この頃ミドルトンはモルトウイスキーを造っていないし、クーリーは1987年に創業したが、実際の操業は1989年からである。しかも、これがアイリッシュでは本来あり得ない、スモーキーなシングルモルトだった・・・。
ブッシュミルズで、80年代にそんなことがあったのかという疑問を持っていたが、今回メモ帳から偶然確かめられたという次第だ。それにしても、トンデモナイウイスキーが見つかったものである。買うなら、早い者勝ちだ。
ということで(?)、座談会は4時半で終わり、そのまま恵比寿にもどって、再び校正、そしてブッシュミルズの原稿書き。台湾に行く前に、どうしてもこれだけは終わりにしたいと思っていたからだ。

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